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キュービクルに含まれるPCB廃棄期限に注意
キュービクル

キュービクルに含まれるPCB廃棄期限に注意

投稿: 2025年8月22日 最終更新: 2025年8月22日

近年、環境保全や法令遵守の観点から「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」の適正処理が強く求められています。特に古いキュービクル(高圧受電設備)には、PCBを含む機器が残されている可能性があり、放置は法的リスクのみならず環境問題にも直結します。
本コラムでは、PCBに関する基礎知識から、キュービクル内機器の調査・処分方法までを詳しく解説します。

1. PCBとは

PCBとはPolychlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)の略称で、人工的に作られた化学物質です。主に油状で、絶縁性が高く燃えにくいため、電気機器の絶縁油や冷却油として極めて有効な材料とされていました。科学的に安定していて長寿命であることから、「夢の油」と呼ばれた時代もあり、特に日本では1950年代から1970年代初頭にかけて変圧器、コンデンサ、安定器、電気機器の絶縁油などに利用されました。

[室外機の周辺温度が上昇した時の影響]

変圧器

変圧器

交流電気の電圧を変えるための装置。トランスとも呼ばれる。絶縁油にPCBが使われていた。

コンデンサ

コンデンサ

一時的に電気を蓄えたり放出したりする装置。絶縁油にPCBが使われていた。

安定器

安定器

蛍光灯を安定して点灯させるための装置。業務用の安定器に内蔵されたコンデンサにPCBが使われたものがある。

電気機器の絶縁油

電気機器の絶縁油

電気機器の絶縁および発生熱の冷却を目的として使用される油の総称。絶縁材としてPCBが使われていた。

しかし、その後の研究により、PCBの特性である化学的な安定性が、逆に環境や生物に深刻な悪影響を及ぼすことが明らかとなりました。1968年に発生した「カネミ油症事件」では、PCBが混入した食用油の摂取により、西日本を中心に広範囲にわたって重篤な健康被害が出ました。この事件が契機となり、PCBの有害性が社会問題として広く認識されるようになったのです。
1972年には日本国内でのPCBの製造・新規使用が全面禁止され、2001年には国際的にも「残留性有機汚染物質(POPs)」としてストックホルム条約により使用・廃棄が厳しく規制されました。

出来事
1929年 米国で初めて商業生産開始(製品名:Aroclorなど)
1954年 日本でPCBの製造が始まる(主に旧カネクロール株式会社が製造)
1968年 【カネミ油症事件】PCBを含む熱媒油が混入した食用油により、西日本中心に健康被害が発生
1972年 日本国内でPCBの製造・新規使用が禁止される(事実上の製造中止)PCB製品はそのまま使用可能な状態が続く
2001年 「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」が施行され、PCB廃棄物の2016年7月までの適性処理が義務付けられる
2003年 環境庁が「PCB廃棄物処理推進計画」を策定(自治体と連携して処分体制を強化)
2004年 「ストックホルム条約(POPs条約)」発効
2012年 PCB特別措置法が改正され、処理期限が2027年3月末まで延長される
2023年
3月31日
高濃度PCB廃棄物の処分期限(法定)終了。以後は原則処理不可、罰則対象に
2027年
3月31日
【予定】低濃度PCB廃棄物の最終処分期限(延長不可)
※これを過ぎると違法保管となり罰則対象に

ただし、製造・使用が中止された現在でも、かつて導入された古い電気設備や産業機器に、PCBが残留しているケースが数多く存在しています。特に、1970年代以前に設置されたキュービクルに内蔵される高圧コンデンサや変圧器などはPCBを含む可能性が高いため、所有者はその有無を確認し、適正な保管・処分を行う法的責任を負っています。

2. PCB特別措置法と処理義務

PCB廃棄物の処理については、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」によって規定されています。この法律では、PCB含有機器の所有者に対し、次のような義務を課しています。

PCB特別措置法における事業者の主な義務

1. PCB含有機器の調査と把握

  • 所有しているすべての電気機器や保管物について、PCBの含有有無を確認しなければなりません。
  • PCB含有が判明した場合、該当機器ごとに情報(製造年、型式、数量など)を把握・記録し、報告する必要があります。

2. 都道府県知事への届出

  • PCB廃棄物の保管・処理を行う場合、事前に都道府県(または政令市)に届出を提出する義務があります。
  • 届出後も、年1回以上の「保管状況報告」が義務付けられています。

3. 期限内の適正処理

  • PCB廃棄物は、地域ごとに定められた期限までにJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)を通じて処分しなければなりません。
  • 処理期限は全国で異なりますが、2027年3月31日までに全ての処理を完了することが最終目標とされています。

違反した場合の罰則

PCB特別措置法に違反した場合、事業者や関係者に対しては厳しい罰則や行政処分が科されます。特に注意すべきなのは、「処分期限の厳守」です。
高濃度と低濃度でPCB廃棄物の処理期限は異なります。高濃度PCB廃棄物についてはすでに最終処分が終了しており、低濃度PCB廃棄物の処分期限は2027年3月31日となっています。
PCB廃棄物に関しては、「知らなかった」「気づかなかった」は通用しません。期限までに廃棄を行わないと、3年以下の懲役または1,000円以下の罰金(法人の場合は3億円以下)が科せられますので、廃棄期限までに余裕をもった計画的な対応が必要です。

低濃度PCB廃棄物の処分期限 - 2027年3月31日 低濃度PCB廃棄物の処分期限 - 2027年3月31日

3. キュービクル内のPCB含有機器

キュービクル(高圧受変電設備)には、電力の受電・変圧・制御・配電などを行う複数の機器が収められています。内部機器のうち、特に1972年(昭和47年)以前に製造された機器には、PCBが絶縁油として使用されていた可能性があります。PCBは安定性が高く長寿命のため、古い機器ではいまだ現役で稼働しているケースもあり、注意が必要です。
以下に、キュービクル内でPCB含有の可能性がある主要機器を解説します。

キュービクル内でPCB含有の可能性がある主要機器 キュービクル内でPCB含有の可能性がある主要機器

4. PCB含有機器の確認方法

お使いのキュービクルにPCBが含まれているかチェックしたい場合、まずはキュービクルの点検結果報告書(記録簿)を確認しましょう。点検結果にPCBに関する記載がなければ、基本的には問題ありません。もしも「PCB含有の疑い有り」「PCBを含有している」などの記載がある場合は、詳しい調査が必要です。
キュービクル内の機器がPCBを含むかどうかを調査するには、以下の3つの方法があります。

1. 機器の製造年による判別

現在PCBは使用禁止されているため、機器の製造年からPCBを含有しているかどうかを判断することができます。
コンデンサなど、絶縁油が外部に漏れないよう密閉されている絶縁封じ切り機器は、1991年以降に製造されたものについては汚染の可能性がないと言われています。
絶縁油の交換が可能な機器も、1994年以降に製造されたものはPCB汚染の可能性はありませんが、絶縁油を交換した際に汚染された可能性があるため、いつ絶縁油を交換または継ぎ足したのか、記録の確認や成分分析などによる確認が必要です。

2. メーカーへの照会

銘板には製造番号や油種、容量などが記載されており、PCB含有の手がかりになります。銘板に記載された情報を元に、メーカーにPCBが使用された機器かどうかを照会できます。
メーカーに照会をしても、「含有を否定できない」といったあいまいな回答が返ってくることもあります。その場合は、油のサンプリング分析をしなければ、PCB含有の有無を判定することができません。

3. サンプリング分析

メーカーに照会しても明確な回答を得られなかった場合に行います。専門の技術者が変圧器やコンデンサから絶縁油の試料を採取し、PCB分析の専門機関で含有量を分析してもらい判定します。

調査には費用と時間がかかるものの、リスク回避のためには不可欠なステップです。もしも保安点検の記録簿にPCBの指摘がある場合は、しっかりと調査し必要な対応を取りましょう。

5. 低濃度PCB廃棄物の処分

PCB分析の結果、0.5mg/kg超含有していると判定された場合、環境大臣に認定された無害化処理認定施設および都道府県知事等の許可を有する施設で廃棄処分をしなければなりません。
廃棄処分は以下の流れで行われます。

低濃度PCB廃棄物の処分 低濃度PCB廃棄物の処分

一般的に低濃度PCBの廃棄処分には、依頼をしてから処分が完了するまでに最短でも2~3ヵ月ほどの時間がかかります。まだ時間があると思って先延ばしにしていると、廃棄期限が近づくにつれて処分の依頼が集中し、完了までに想定以上の時間がかかる可能性もありますので、余裕をもって対処しましょう。

6. 古いキュービクルは早めに入れ替えを!

PCBは法令違反だけでなく、企業の社会的信用を揺るがす重大な環境リスクです。すでにPCB廃棄物の最終廃棄期限は迫ってきており、期限を過ぎると処理が非常に困難になるうえに罰則も科されます。企業・事業者としては「知らなかった」では済まされません。

30年以上前に設置したキュービクルは、耐久年数的にも入れ替えが必要な時期です。ネクシーズZEROではお客様の保安状況を元に無料でキュービクルに関する現地調査・相談を承っていますので、もし古いキュービクルを今も使用し続けているようなら、お気軽にネクシーズへご相談ください!

監修・執筆

株式会社NEXYZ. 業務本部

株式会社(株)NEXYZ. 業務本部

最新の業務用設備を導入できる「ネクシーズZERO」サービスを販売しています。このコラムでは、業務用設備に関するさまざまな情報を発信していきます。

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